パーキンソン病患者に対する間欠性シータバースト刺激の効果

Neurology. 2011 Feb 15;76(7):601-9.

Intermittent theta-burst transcranial magnetic stimulation for treatment of Parkinson disease.

本日論文3本目。今月はちょっとやりすぎましたか?みなさんヘトヘトでした。しかも濃い内容ばかり。最後は究極でしたが(笑)。パーキンソン病患者さんに対するシータバースト刺激です。これは,rTMSの派生みたいなもので,脳波から観察されるシータ波と呼ばれる5~10Hzのリズムで短い連続刺激を繰り返すと,長期増強LTPが効率よく誘導できるそうです。これはもともと動物実験で海馬から生じる波形からスタートしているようですが、近年脳卒中患者さんにも応用されたりしています。rTMSよりも安全でより理にかなった方法のようで、M1興奮性の増大なんかを誘導できるそうですが、実際体験したことないのでわかりません。 運動閾値TMSは体験しましたが,あまり気持ちの良いものではありません(笑)
この研究では、メインアウトカムを10m歩行時間としていますが、なぜかM1手指領域と背外側前頭前野DLPFCに実施しています。結果は、10mやUPDRSには有意な変化がなく、抑うつが改善し、手指の寡動が改善傾向にあったそうです。DLPFCへのrTMSは欝に対する方法として多く実施されていますが、それら先行研究通り気分が改善したようです。しかし、歩行はshamと比較して有意差なし。当然歩行であればM1下肢体幹領域に刺激するほうが良いのでしょうが、現実問題として困難なのか実施しておられませんでした。脳卒中患者の下肢運動障害に対するrTMSの報告も現状ほとんどないと思います。リスクのほうが大きいからでしょうか。半球間抑制メカニズムとはまた違う理論根拠になるからでしょうか。
パーキンソン病患者さんの場合では、その病態から考えてtDCSをFESのように使用したほうが気軽で効率的で臨床的に良いように思います。ヘルメットをかぶりながら(少し現実的ではないかもしれませんが)刺激するという感じです。皮質に抑制がかかっているような状況の中で、TMSのような刺激でいくらM1などの興奮性を高めても内発的運動にブロックがかかるような状況であれば実際の動作としては発現しにくいと考えられます。その点、tDCSをFESのように使えればoffのときにスイッチを入れるなどの工夫で運動発現を少しでも改善できるのではないでしょうか??ただし、直流刺激では長時間使用するとやけどやかぶれのリスクが上がるので、パルス波やon/offを設けるなどの工夫が必要かもしれません。そのうち研究が出そうな気がします。
と今月の物理医学系リハ研究会はここまで。
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