脳卒中患者の歩行の協調性の回復に関するFESとトレッドミル,床上歩行練習の効果

Neurorehabil Neural Repair. 2011 Sep;25(7):588-96. Epub 2011 Apr 22.

Recovery of coordinated gait: randomized controlled stroke trial of functional electrical stimulation (FES) versus no FES, with weight-supported treadmill and over-ground training.

ClevelandでのFESで有名なDalyさんの研究。デザインはSingle-blindの6か月フォローアップ研究で,埋め込みFES+1.5時間のトレッドミルと床上練習群,no FES群のRCTです。介入は週4回の12週間で結構なintensiveなトレーニングです。メインアウトカムはG.A.I.Tという評価でまだ詳細は読めていませんが,おそらく歩行の動作分析的要素を含んだ順序尺度の評価のようです。その他は,筋力,Fugl-meyer,6MWT,FIMでした。結果は,G.A.I.TがFES群が有意に改善し,6か月後もその改善をキープしていたことでした。その他,群内比較ではFES群,no FES群とも前後で有意に改善していたとのことです。
今週の吟味はまず対象者のbaseline時の6MWTが平均530mとのこと。これは何かの間違いかというくらいの好記録です。さらに4週間で2群とも100-200m改善したと・・・恐ろしい。今回の目的は歩行の協調性が変わるかとのことでしたので,結果は変わったのでバンザイ。しかし,やはり下肢はむずかしいのか,8チャンネルのコンピュータシステムの埋込みFESというこれ以上末梢からの電気では与えようのない完璧に近い機器でけっこう介入したにも関わらず,劇的な変化とまではいかなかったようです。この論文もそうですが,最近私が思うのは,機器の効果をみるためにトレッドミルでも電気でもロボットでも介入を統一された研究が多いですが,やはり患者さんの歩行障害の問題点は様々なわけで,トレッドミルでは背屈筋を促通するのは難しいし,電気でダイナミックな動作や遊脚改善のための腸腰筋の刺激も難しいし,電気刺激もトレッドミルもどういった患者さんのどういった問題点にどう使用すればもっとも効果的かどうかという研究をしていくべきPhaseに来ているのではないかなと思います。そうなれば研究としては難しくなるのですが,実際臨床には一番大事な要素でして,ぜひとも当研究会でも実践していければと強く思いました。
しかしながら,この研究,日本ではまずまねできそうにない重厚なデザインでした・・・