感覚障害に対するtDCS

Clin Neurophysiol. 2008 Apr;119(4):805-11.

Improvement of spatial tactile acuity by transcranial direct current stimulation.

Brain Stimul. 2012 Oct 27.

Transcranial direct current stimulation ameliorates tactile sensory deficit in multiple sclerosis.

新年度一発目は感覚障害に対するtDCSです.脳卒中患者において感覚障害は約1/3にみられ,運動障害単独よりも感覚障害を合併すると機能的自立度が低下することが知られています.近年のシステマティックレビューにおいても脳卒中後感覚障害に対する介入において感覚というImpairmentを改善するにはコレ!という介入報告は少ないのが現状です.近年研究が進んでいる経頭蓋直流刺激tDCSですが,陽極をS1に貼付することで健常者においても感覚(grating orientation taskという課題において)が改善したという報告がなされました.またこれを多発性硬化症患者に応用したのが下2つ目の論文です.この論文でも1日20分2mA,5日間の介入が有意に感覚を改善させたとありました.運動野のみならず感覚野の可塑性変化も生じることは明らかにされており,ラットの髭の切断やヒトにおける四肢切断患者において,その脳地図にリモデリングが生じることが報告されています.我々理学療法士は治療中常に感覚フィードバックを入力しています.なぜなら運動学習には必須だからです.感覚入力方法を上手くデザインすることが学習を促進するうえではかなり重要だといえます.tDCSはその感覚入力による可塑性変化を誘導できる可能性を秘めています.しかしながら,このtDCS未だ研究段階で臨床応用には様々なハードルを乗り越える必要があります.畿央大学健康科学部理学療法学科の松尾篤先生中心にtDCS研究が実施されておりますので,ぜひそちらもご覧ください.