Towards a mechanism-based view on post-stroke shoulder pain: theoretical considerations and clinical implications.
Roosink M, Renzenbrink GJ, Geurts AC, Ijzerman MJ.
激務で勉強会内容のご報告がおろそかになってしまい,申し訳ございません.激務はただの言い訳です.今年は復習もかねてしっかりアップしたいと思います.
というわけで,新年一発目.健常者に対するGVSと肩の痛みに関するレビューです.GVSはマニアックすぎるのでもう少しまとまってから報告いたします.
オランダの研究者Roosink氏によるレビューとここ五年の脳卒中後肩の痛み(post-stroke shoulder pain: PSSP)についてレビューしました.以下に要点を書きます.
•現在のところ,Post-stroke shoulder pain(PSSP)のメカニズムの理解について未だ明確ではない
•理論的に,PSSPは侵害受容性,または中枢性神経因性疼痛かその両方であるとされる
•加えて,PSSPの始まりの責任機構はそれが持続する機構と異なるかもしれない
•この関係は脳卒中後疼痛の診断と治療の関係に問題を投げかける
•しかし,PSSPにおいて報告されたそれぞれの症例は単に脳損傷や上肢の軟部組織の損傷がPSSPの患者の主要な要因を占めていると考えられている
•軟部組織損傷は患者自身による管理の不足に組み合わさって脳卒中後の神経筋制御の低下によって生じる可能性があり,結果として体性感覚や認知機能の障害も認める
•上肢の運動障害は多くの日常生活を遂行するために運動の自由度が多く,そのため損傷する傾向にある
•そして,外傷はたびたび,反復する微細な,あるいは持続的な微細損傷によって軟部組織損傷が生じる
•加えて,不活動の長期化や代償の使用,痛みによる非正常な運動パターン,運動制御の低下は結果として痛みを侵害疼痛の進行に寄与する
•長期的な侵害受容は脊髄と上脊髄ニューロンレベルの両方で構造的再構成を生成する.
•感作が永続的になるように無害の刺激でさえ痛みになる
•加えて持続的な侵害受容(刺激?)はDNICの永続的活性化につながる可能性があり,結果として内因性抑制が無効になる
•脳卒中後中枢性疼痛は脳卒中による感覚入力の欠如が直接的な抑制の欠如,もしくは増大した上脊髄侵害受容の促通によるものである可能性がある
•一方で,脳損傷は脊髄侵害受容の促通もしくは脱抑制を引き起こす.また,情動や認知や自律神経の変化も生じさせる
•認知(注意)や情動(不安)は二次的な慢性疼痛に移行させる可能性があり,結果として患者の社会環境(対人関係)の変化を引き起こし,疼痛行動の増加やPSSPの持続に寄与する
この病態を示すわかりやすいモデル図がこの文献には提示されています.
リハ介入は不使用,無視,感覚障害,運動麻痺,情動,自律神経系,麻痺側の管理,早期の鎮痛などどのあたりに介入すべきかをわかりやすく解説してくれています.各病期によっても病因が異なってくることも注目すべきことだと思います.
その他の文献もレビューしましたのでご参考までに.
Stroke. 2007 Feb;38(2):343-8.
Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study.
Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, Lindgren A.
Eur Neurol. 2011;66(3):175-81.
Enhanced-MRI and ultrasound evaluation of painful shoulder in patients after stroke: a pilot study.
Pompa A, Clemenzi A, Troisi E, Di Mario M, Tonini A, Pace L, Casillo P, Cuccaro A, Grasso MG.
J Rehabil Med. 2012 Jun 7;44(7):553-7.
Sonography and physical findings in stroke patients with hemiplegic shoulders: a longitudinal study.
Pong YP, Wang LY, Huang YC, Leong CP, Liaw MY, Chen HY.
J Physiother. 2013 Dec;59(4):245-54.
Combined arm stretch positioning and neuromuscular electrical stimulation during rehabilitation does not improve range of motion, shoulder pain or function in patients after stroke: a randomised trial.
de Jong LD, Dijkstra PU, Gerritsen J, Geurts AC, Postema K.
ClinRehabil. 2012 Sep;26(9):807-16.
Functional orthosis in shoulder joint subluxation after ischaemic brain stroke to avoid post-hemiplegic shoulder-hand syndrome: a randomized clinical trial.
Hartwig M, Gelbrich G, Griewing B.
Stroke. 2013 Nov;44(11):3136-41.
Suprascapular nerve block for shoulder pain in the first year after stroke: a randomized controlled trial.
Adey-Wakeling Z, Crotty M, Shanahan EM.
当院でも5年間のカルテから肩の痛みの有病率を算出しましたが,約38%と先行研究とよく似た結果になりました.かといって明確な介入ができていないのが現状です.肩の痛みはその後の機能予後やQOLに影響を与え,メンタル面にも大きな影響を及ぼします.脳卒中患者さんの主要な問題点の一つですが,これといってまだ決定打がありません.何とかこの問題を解決すべく研究を続けていきたいと思います.
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